金ETF(上場投資信託)

概要

金ETF(上場投資信託)は、金の価格に連動するように設計された投資信託で、株式と同様に取引所で売買できる金融商品です。これらの金融商品は、投資家が実物の金を購入・保管することなく、金市場に投資できる便利な手段を提供します。

詳細な仕組み

金ETFには主に以下の2種類があります:

1. 現物保有型

実際に金を保有するETFで、投資家の資金を使って金の現物を購入し、安全な保管施設で保管します。各ETF株式は特定量の金(通常は1/10オンスなど)に相当します。

2. 金先物・デリバティブ型

金先物契約やその他の金融派生商品を使って金価格に連動するリターンを提供するETFです。現物保有型と比較して、より複雑な構造を持ちます。

メリット

アクセスの容易さ

金ETFは証券取引所で通常の株式と同様に売買できるため、少額(1株)から投資することが可能です。専門業者を通じて金の現物を購入する必要がなく、通常の証券口座で取引できます。

管理の簡便性

実物の金を保有する場合の保管、保険、セキュリティの懸念がありません。ETF管理会社がこれらすべての責任を負うため、投資家は管理の手間から解放されます。

高い流動性

多くの金ETFは取引量が多く、流動性が高いため、いつでも市場価格で売却することが可能です。これは、実物の金を売却するときに比べて、より迅速かつ容易に現金化できることを意味します。

分散投資のしやすさ

ポートフォリオの一部として金への投資を容易に組み込むことができます。株式や債券などの他の資産クラスとともに、同じ口座で管理できます。

コスト効率

小口投資家にとっては、実物の金を購入・保管するよりもコスト効率が高い場合が多いです。取引コストや保管コストが削減できます。

デメリット

管理手数料

ETFは管理手数料(通常、年間0.3%〜0.5%程度)が発生します。長期保有する場合、これらの費用が累積し、リターンを圧迫する可能性があります。

カウンターパーティリスク

ETF発行体や金の保管機関の信用リスクが存在します。特に、金先物やデリバティブを使用するETFでは、追加的なカウンターパーティリスクが生じることがあります。

金現物との価格乖離

市場の極端な状況下では、ETFの価格が実際の金価格から乖離する可能性があります。これは特に市場のボラティリティが高い時期に起こりやすいです。

所有権の間接性

投資家は金そのものではなく、ETFの株式を所有しているため、実際の金に対する直接的な所有権を持ちません。極端な経済危機の場合、この間接所有が問題になる可能性があります。

主な日本の金ETF例

SPDRゴールド・シェア

取引コード

1326

特徴

世界最大かつ最も流動性の高い金ETFの一つ

発行体

ワールド・ゴールド・トラスト・サービシズ

裏付資産

実物の金を100%保有

手数料

年率0.4%程度

NEXT FUNDS 金価格連動型上場投信

取引コード

1328

特徴

野村アセットマネジメントが運用する日本の金ETF

裏付資産

主に金先物取引

手数料

年率0.5%程度

海外の代表的な金ETF

iShares Gold Trust (IAU)

比較的低コストで、実物の金を保有

VanEck Vectors Gold Miners ETF (GDX)

金鉱業株に投資するETF

Aberdeen Standard Physical Gold Shares ETF (SGOL)

スイスの保管施設で保管される金を裏付けとするETF

投資方法

購入方法

  1. 証券口座の開設: ネット証券会社や銀行の証券部門で口座を開設

  2. 取引注文: 株式と同様に注文(指値注文、成行注文など)を出す

  3. 保有: 長期投資または短期売買の戦略に応じて保有

投資戦略

  1. 長期資産分散: ポートフォリオの一部として長期保有し、分散効果を得る

  2. インフレヘッジ: インフレ懸念が高まる時期に金の配分を増やす

  3. 定期積立投資: 毎月一定額を投資して、ドルコスト平均法を活用

  4. 市場タイミング戦略: 金価格の変動を分析し、タイミングを見計らって売買

税金に関する考慮事項

日本では、金ETFの売却益は原則として申告分離課税の対象となり、20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税率が適用されます。

配当金(一部のETFでは発生する可能性あり)も同様に課税されます。ただし、NISA口座やつみたてNISA口座を活用することで、一定の条件下で非課税となる場合があります。

適した投資家

金ETFは以下のような投資家に適しています:

  • 実物資産の保管リスクや手間を避けたい投資家

  • ポートフォリオの分散を求める長期投資家

  • 少額から金市場に参加したい投資家

  • 定期積立投資を行いたい投資家

  • 手軽に金市場へのエクスポージャーを得たい投資家

ETFは実物の金を直接保有するよりも手軽で、多くの投資家にとって金市場への最も簡単なアクセス手段となっています。